「風と共にゆとりぬ」フィスチュラと共に悶ゆ
第三部が抜群に面白かった。
朝井さんはご自身の身体でも相当デリケートな部分にまつわるあれこれと、ご自身の心模様を包み隠さずに、赤裸々に、ありのままに描写し、あの「西遊記」と肩を並べるエンターテイメントに仕上げている。あのような壮絶な体験をされたら、作家としては書かねばという思いに駆られるであろう。何度笑わせられたか分からない。第三部の印象が強烈すぎて、このままでは朝井さん=フィスチュラの人、となってしまう。もうないのに。
第二部は、日経新聞での連載をまとめたものだそうだが、僭越ながら、日経新聞という枠にとらわれて朝井さんの良さが出し切れてないと感じた。
全編にわたって、もっとバカさを炸裂させてほしかった。理知的な人の綴る「私のバカエピソード」が大好きなので、もっと朝井さんの本気のバカエピソードを語ってほしい。とはいえ、作家なのだからバカエピソード披露以外にも、書くべきことや書きたいことはおありだろうということはもちろん理解している。それでも願ってしまうのだ。もっと朝井さんにバカをやって、エッセイを書いてほしい。
でも、こんなふうに願わずとも、朝井さんはこの先も真面目にバカエピソードを量産し、我々を笑わせてくれるだろう。
しばらくはスーパーでオクラを見るたびに笑ってしまいそうだ。
キッモ……。