なる楽生活

なるべく楽に、なるべく楽しく。日々の暮らしの雑記。

こどもに馬鹿とかクソとか死ねとか言わないで

先日、久しぶりに家族三人で娘の自転車の練習をしに公園に出掛けた。

 

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わたしは自転車に乗るのが苦手なので、夫が娘に自転車の乗り方を教えている。

わたしは自分が苦手だと言うこともあり、上達しなくても構わないと思う反面、娘が自転車に補助輪なしで上手に乗りたいという気持ちがあるのなら、乗れるようになったらいいなあと思ってもいる。

 

夫は、やるからにはすぐにでも結果を出したいようで、娘にも容赦無い言葉を投げかける。

それを横で聴いているのが辛かった。

 

「小学校に入って自転車に乗れないと、友達と遊べなくなるよ!」

…娘はまだ年中で、入学までには1年以上もある。果たして自転車に乗れないくらいで、友達と遊べないってことがあるのだろうか?

わたしはこういう脅しのような言葉が好きではなく、娘にも「自転車に乗れると遠くの公園にも行けて楽しいよ」というような明るい言葉をかけて、やる気を引き出したいと常々思っている。

 

「言った通りにやれよ、馬鹿!」

…「お父さんが言った通りにする」んじゃなくて、「補助輪なしで自転車に上手に乗れるようになる」のが目的じゃないのかい?それから、人に軽々しく馬鹿って言うものじゃない。

 

「あのさあ、人の話ちゃんと聞いてんのかよ!ほんとクソだな」

…投げつけられる乱暴な言葉は単なる武器で、娘には言いたいことを届けることができない。娘は萎縮して「怒られた」「怖い」という印象しか持てない。それから、人に軽々しくクソって言うものじゃない。

 

「別にいいよ?(娘)ちゃんが自転車乗れなくても、お父さんは全然困らないし」

…教える立場にある人間が、自分の本分を弁えていないことが明らかになる一言。教える側がこんなこと言っちゃダメじゃないか。教師がそんなこと言ったら、わたしは勉強を投げ出して遊びに行ってたぞ。できなくても寄り添うのだ。

 

「泣くなァ!」

…成人男性に怒鳴られたら普通泣くだろう。君が泣かせているんだよ…

 

娘は目をぎゅっとつむり、涙をポロポロとこぼしていた。こんなやり方では上達しないし、自転車が楽しくなくなるだけじゃないか。それ以上に、娘の心が心配だ。

それでも、夫に「どうすんの?やめるの?」と訊かれれば、娘は「やる」と言って涙を拭い、ハンドルを握り直している。

 

「悔しくて泣いてもいいんだよ。泣いても諦めないで練習する(娘)ちゃんはすごいよ」と、タオルで娘の涙と洟水を吹きながらわたしは声をかけた。夫の否定的な言葉も、その都度全力で否定した。夫がますます苛立っているのがわかる。

 

落ち着いた状態で、絶対、夫に一言言わねばと思った。

 

帰宅して入浴し、娘がテレビを見ている間、二人でキッチンに立った。

「あのさあ」と話し出す。

 

「(夫)くんが(娘)ちゃんを怒るときに、わたしが(夫)くんに『そういう言い方しないで』『馬鹿とか言わないで』って言うから、(夫)くんはわたしにイラついてると思うし、それで(夫)くんはわたしを良く思ってないんだろうけど、いくら自分のこどもだからって、他人に言わないような言葉を言ってはいけないと思うんだよね。というか、言わないで。馬鹿とかクソとか死ねとかさ」

 

「死ねなんて言ってない」

 

「今日は言ってないけど、頻繁に『死ねよ』って言ってるよ。先週公園でホッピングやってるときとか言ってた。無意識にそういう言葉を言ってるんだよ。たぶん、(娘)ちゃんに出来るようになってほしい、ちゃんとしてほしいって思ってるからだと思うけど、(夫)くんの言葉は否定的で乱暴すぎる。そんなこと父親に言われたら、(娘)ちゃんは傷つくよ」

 

夫は黙って野菜を刻んでいる。

 

「せっかく結婚したんだし、(夫)くんとは仲良くいたいと思うよ。最近(というかここ数ヶ月?一年以上?)、わたしたちが前ほど仲良くないのは、(娘)ちゃんを否定する(夫)くんをわたしが否定して、(夫)くんがイライラしてるってのもあるよね?でも、これからも(夫)くんが(娘)ちゃんに否定的なことや暴力的な言葉をぶつけるなら、その度にいちいち(夫)くんを否定して、(娘)ちゃんを守るから。そのせいでわたしたちの仲が悪くなっても、それは仕方ないって思ってるから」

 

ずっと一人で話していて、聞いてるのかな?と思ったが、ここでようやく夫が「もうわかったよ」と言ったので、それ以上はこのことについては言わず、ご飯を作って三人で食べて、テレビも三人で見た。夫がわかったと言うのなら、何かをわかったのだろう。

 

どうして夫は娘に対してだけあんなに短気で怒りっぽく、ひどい言葉で罵るんだろう。決して嫌いというわけではなく、かわいいなと思ってそうな時もあるのだけど。

夫が娘に「自分の言うことをきかせる」というのが目的になってしまっていることが多いような気がする。「自分の言う通りにすれば、出来るようになる」という思いがあるのだろうか。夫はいわゆるできる人の部類なので、最短距離で目的地に到着することに重きを置いているのかもしれない。自分のこども相手に何かを教える経験が少なくて、待つのが苦手なのかもしれない。

 

この日の終わりに、娘にベッドの中で「今日は自転車の練習、諦めないで頑張ってたね。すごかったよ。わたしならあんな風に言われたらやめちゃうかも」と言うと、娘は「ママ、わたしを庇ってくれてありがとう。ママがタオルで涙を拭いてくれて、嬉しかったよ」と言った。

いじらしさにわたしが泣きそうになる。

そして、これからも絶対に夫のひどい言葉をわたしが打ち消してあげなきゃ、と使命感に駆られた。

 

こう書くと夫はとんでもなくひどい父親みたいだけど、もちろん良いところもたくさんあるのだ。ただ、そのいいところをかき集めたとしても、この言葉の暴力は赦されるものではない。

 

言葉による虐待を見ているだけなのは、容認しているのと同じことだと思うので、夫にもやめてと言い続け、やめてくれるまで絶対にこちらも抵抗をやめないぞと思っている。